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- インタビュアー
- 大学を出てからいろいろなお仕事をされてきたと思うのですが…。
- 上田社長
- 入社後、東京支店に配属になり、そこで、マンションやオフィス、ホテルなど、ありとあらゆる現場を経験しましたよ。配属されて10年、名古屋支店に転勤が決まったのですが、それが私の転換期となりました。
- イ
- 転換期? 詳しく教えてください。
- 上
- 名古屋に行ったのがちょうど社会人10年目だったので、年齢にすると30ちょい。仕事も楽しくなりはじめたころでした。でも、転勤後は、社内の人の顔を覚える意味もあり、積算の部署で内勤でした。でも半年くらい経ってくると、イライラしはじめて…。
- イ
- イライラ?
- 上
- 現場に出たくなってくるんですよ。そこで、出してもらった現場が、積算の部署で自分が積算した現場。そこの施工をお前にやれということでしたね。積算も難しい場所でしたが、現場としても、名古屋の官庁街にあって三方がビルに囲まれているという大変難しい場所でした。ビルに囲まれているので、工事に伴う騒音などを理解してもらうため、近隣交渉から始めたのですが、大変苦労しましたね。

- イ
- 大変だったんですね。
- 上
- でも、そのときに、発想を転換してみたんです。せっかく工事のために足場を組むのだから、それを利用して、周りのビルにも、壁の補修をしませんかと提案してみたら、3つのビルのうち2つのビルから発注がきた! 請け負った工事の工程表を立て、職人さんの空いた時間に補修工事の工程を組む。そうすると効率よく仕事が回ったんです。施工側・補修側の双方の発注者からも感謝され、職人さんも無駄な時間がなくなり喜ばれ、うちも仕事が増えてと、誰もが喜ぶ結果になったんです。この仕事が、私の仕事の転機につながったんです。
- イ
- 新たな仕事の方向性が見えたんですね。
- 上
- そうですね。当時、フジタは開発事業、区画整理事業に本格的に取り組み始めたころで、当時の社長が、単純に請け負う仕事だけというのは、建設会社としていかがなものかといって、受注をつくる、注文をつくるという“造注”という言葉をかかげて、会社としても“まちづくり”に少しずつシフトしていった時期だったんです。私も、この名古屋での仕事を機に、開発事業をやってみたいなと思い始めたんですよね。
- イ
- 名古屋でまちづくりに取りかかったのですか
- 上
- いいえ。当時、会社として開発事業を強くしようということで、全国から開発事業をやりたい人を募っていたんです。そこで手を挙げ、念願かなって東京に異動になりました。そして最初に配属されたのが、西新宿6丁目の再開発プロジェクトだったんです。当初は等価交換事業ということだったのですが、途中で再開発の促進地区になり、地元の人たちと一緒になってやっていきました。準備からちょうど10年で完成。むちゃくちゃ早かったですよね。全員合意型で全国的にも非常に珍しいケースでした。
- イ
- 規模はどれくらいだったのですか
- 上
- 組合員数400人位、マンションも4棟ありました。いろいろと大変でした。都市計画決定されたころに、オフィスの所長という立場になりました。37,8歳のころでしたね。とても思い出深い、プロジェクトです。
- イ
- 所長って、一家の主ですね。
- 上
- 現場の所長も、経営者みたいなものです。私は、この再開発で、非常にいい勉強をさせてもらいました。それまでの目線と違う、モノを作る前を捉えることで、考え方がどんどん広がっていくようになりました。今の経営にとても役立っています。
- イ
- 現場での視点が今の仕事につながっているんですね。
- 上
- 今、会社が大変な時期なので、これまでのやり方では通用しません。だから、社員と一緒にいろいろな改革をやってきています。経営者としてやりがいがありますね。
- イ
- 改革するのは大変なのでは?
- 上
- そうですね。もっと、よりよい会社にするために、業務の改善など、早い時期から手をかけてきました。外部のコンサルタント会社に依頼し、本格的に1年間分析をして、会社の強み・弱みを知り、強みを伸ばし、弱みについては、存続含め思い切った判断をする、そんなことも行いました。
- イ
- 反発はなかったのですか。
- 上
- 我が社では40年ほど前から、経営の中にVE(Value Engineering)手法を取り込んでいるので、社員はあまり抵抗なく、自然に受け入れてくれました。歴史がそういう社風をつくっているんですかね。さらに、現在では、業務の中身のプロセス改善を開始し、本社や支店のやり方の見直しから、組織変更まで、がんがん進行しているところです。そういう意味では、筋肉質の会社になりつつあるのかもしれませんね(笑)。今は利益率もかなりいい状態でやっているのですが、何せ、マーケットが縮小してきているので…
- イ
- 現在、建築・建設業界のマーケットは厳しいところがありますね。海外へも目を向けているんですか?
- 上
- 海外も、かなり前から進出していて、中国は25年前からですね。現在は現地法人を作り、そこの社員たちが優秀な技術者に育っています。あと、ドバイでも工事をしたんですよ。
- イ
- ニュースでも話題になっていましたね。ドバイではどのような工事を?
- 上
- 新交通システムのレールを敷く仕事をやりました。三菱重工さんが請け負った仕事で、レールを敷く部分がうちの仕事だったんです。台湾の新幹線もうちで施工させていただきました。今後も新幹線計画がある、ベトナムやブラジルなどでも仕事をする可能性がありますね。
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