学部長からのメッセージ

2021年度 新入生のみなさまへ

空間を五感で感じる

「建築は工学なのか。」これは長きにわたって日本の建築教育の中で問われ続けてきた課題でした。工学部の中に建築学科が位置づけられるのが当たり前だった時代に、実は建築は工学ではないのではないか、という議論が繰り返しおこなわれていました。建物の構造や設備については、いかにも工学系の研究が数多く見られますが、都市計画や空間のデザインは工学なのでしょうか。

そこで工学院大学は、長い間の議論を経て、今から10年前の2011年に工学部から離れて、日本で初めての建築学部を創設しました。 その際、現在の「まちづくり学科」、「建築学科」、「建築デザイン学科」の3つの学科をつくり、その学科の中に都市デザイン、ランドスケープデザイン、安心安全、環境共生、建築計画、建築構造、建築生産、建築設備、建築デザイン、インテリアデザイン、福祉住環境デザイン(2021年度より共生デザイン)、保存・再生の計12の専門分野を立ててスタートしたのです。

建築学部に入学すると3年生の時に学科を選択し、4年生になると研究室を選択して自分の専門とする分野を定めていくことになります。しかしこれは自分が勉強する分野を「狭めていく」ということではありません。あくまでも自分が探求する分野を「定める」だけであり、その分野を深めていくためには幅広い知識が求められることは変わらないのです。 ですから1年生、2年生の時には幅広い基礎や教養となる分野の講義を履修するとともに、3年生、4年生の時には自分の専門だけでなく、他学科や他分野の授業を受けて、 自分が極めて行く分野に厚みを持たせるための研鑽を積んでください。

ところで、昨年、2020年は歴史に刻まれる年になりました。言うまでもなくCOVID-19の感染拡大によるパンデミックが起きた年でした。そのために世界的なイベントであるオリンピック・パラリンピックの延期も含めて、これまでとは全く違う生活や仕事の仕方が強いられる年になりました。

大学での授業も遠隔方式による授業が中心となり、対面による授業は数限られたものしか出来ませんでした。もちろん教員も様々な工夫をすることにより遠隔教育が抱える課題をクリアしようと努力をしましたが、同時に学生の皆さんも困難な状況のもとで、かなり高い成果をあげることができたのではないかと考えています。 今年度は、この不幸な状況のもとで得ることができた遠隔教育のメリットを活かしつつ、対面による授業を組み込んで授業を組み立てる予定にしています。

昨年は建築教育にとって、「空間を五感で感じる」というとても大切な機会が失われた1年でした。COVID-19の蔓延により行動制限が求められ、旅に出ることはもとより、都内を歩き回ることすらも自粛を求められるような状況だったために、建物を見て回ると言ったことが全くできない一年でした。いずれの分野に進むにしろ、実際に建てられている建物を体感するということは、非常に大きな刺激であり、かつ 皆さんのこれからのバックボーンになることは間違いありません。まだまだパンデミックが治まっているわけではありませんので、適切な感染対策をとりながら、経験値を増やすことにより、幹の太い根を広げた大学生になることも忘れないでください。

2021年4月2日
工学院大学建築学部 学部長 筧 淳夫

関連ページ